2010/12/04

ワイエス展

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火曜の夕方あたりから体調崩して、水曜の午後追い出されるように早退。笑ってしまうくらいぴったりのタイミングで、同居人は一週間の関西出張へ旅立つ。まあ木金と会社休んだけど風邪くらいのものなので、とりあえず茶色のもしゃもしゃフリースともしゃもしゃルームシューズを装備して、2日間ふとんにこもって過ごした。冬のくまのように。嵐が連れてきた春のような陽気に目覚めたころには、もう元気でした。

今日土曜もそんなこんな、寝ていた方が具合悪くしそうな快晴だったので、久しぶりに母と美術館へ行ってきた。北浦和の埼玉県立近代美術館にて、アンドリュー・ワイエス展「オルソン・ハウスの物語」
ワイエスが、当人達が亡くなるまで描き続けた、姉弟とその家。昨年現役のまま亡くなったワイエスの、その生涯90余年。初期の作品はそれこそ戦前のもの。その頃の筆致と眼差しと、それから数十年後の筆致と眼差しが、同じように目の前にあることに微かな目眩を覚えた。絵画の面白いところは、写真とも小説とも違って、ひと筆の痕跡が残るところだ。作家の生きた「動作」、それがそのまま目の前に現れる。
ずうっと前に亡くなったような巨匠の展示でもそれは同じことのはずなんだけど、ワイエスはついこの間まで生きていたんだ。そのことが、人一人が積み重ね織り上げていく、小さな物語の雄大な流れを想わせる。

ワイエスの作品が発する物語というのは、それはそれは小さなもの。風にそよぐ一本の枯れ草であったり、納屋に転がるバケツであったり。そこでは人でさえ、なにげない一瞬でしかない。そんな呼吸一つで散ってしまう小さな小さな物語の、人やものがその瞬間まで関わってきたあらゆる過程によって、そうでしかありようのない必然。それを見つめる画家の、喜びと寂しさが一緒になった眼差し。その半世紀以上の堆積が目の前にあるんだから、そりゃくらくらするわ。

オルソン家の終焉という題で幕を閉じるこの展示、見終えたときにはなんだか年をとった気がした。
とても良い展示だったと思うけど、ほぼ全ての作品が素描か水彩の習作なので、ワイエスに初めて触れる人には引きが弱いかも。テンペラや、ドライブラッシュでも画集のハイライトになるような作品はひとつもないです。せめて画集や図版だけでもいくらか置いといたらいいと思う。

展示の後はお昼やら母が行きたがっていたカフェに行き、ついでに浦和の調神社(つきじんじゃ)というそこかしこにウサギのモチーフのある神社へ寄った。狛犬の代わりにうさぎ、手水舎で水吐いてるのも龍じゃなくてうさぎというなんともかわいらしい神社。来年うさぎ年だし、近い方ぜひ。

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